審判 THE TRIAL A John Williams Film 原作:フランツ・カフカ審判 THE TRIAL A John Williams Film 原作:フランツ・カフカ

2018年6月30日(土)より 
渋谷・ユーロスペースにて公開

ほか全国順次

にわつとむ
常石梨乃田邉淳一工藤雄作
川上史津子早川知子関根愛村田一朗大宮イチ
坂東彌十郎(特別出演)高橋長英品川徹

監督・脚本  ジョン・ウィリアムズ音楽  スワベック・コバレフスキ
原作  フランツ・カフカ「審判」
プロデューサー  高木祥衣  古川実咲子  塩崎祥平
撮影  早野嘉伸照明  大久保礼司録音  小川武美術  中村三五編集  稲川実希音響効果  堀内みゆき
監督補  高田真幸助監督  岩崎祐ヘアメイク  西尾潤子  松本幸子衣装  斎藤安津菜制作担当  竹上俊一
人形創作・操演  グラシオブルオ
後援  上智大学ヨーロッパ研究所  公益財団法人日独協会製作・配給  百米映画社

NEWS

舞台挨拶などイベントスケジュールは
 こちら をご覧ください

INTRODUCTION

フランツ・カフカの不条理小説「審判」を
現代の東京を舞台に映画化

映画「審判」は、フランツ・カフカが書いた同名小説を、イギリス出身のジョン・ウィリアムズ監督が現代の東京を舞台に映画化している。もともとは、ウィリアムズ監督が実験的に実施した俳優向けのプロジェクトで「審判」をテキストにとりあげ、2015年に演劇作品として上演。その後、原作により忠実な脚本を映画のために書き下ろした。

サスペンスとブラックユーモアを織り交ぜて、現代の日本を風刺

「審判」は100年以上も前に書かれた小説だが、いつの時代にも通じるメッセージ性を持っている。得体の知れない巨大な力、システムにコントロールされた、理不尽で滑稽な出来事が、次々と主人公Kの身に降りかかる。その不条理な状況を前に、主張も反抗もしない主人公の姿は、現在の日本、ひいては世界中に漂う、不穏な社会の波に翻弄される私たちの姿を暗示している。

本作の主演を務めるのは個性派俳優にわつとむ。ウィリアムズ監督作品は三作目で、今回が初主演。脇を固めるのは、品川徹、高橋長英らの名優たち。そして、“殴る男”役で重厚な印象を与える坂東彌十郎は、歌舞伎界の名脇役で、本作は11年ぶりの映画出演、初の現代劇となる。

STORY

木村陽介。 銀行員。
30歳の誕生日に、 逮捕。
罪状不明。

現代の東京。とあるマンションの一室で銀行員の木村陽介が目覚めると、見知らぬふたりの男が立っていた。逮捕を告げに来たと言うのだが罪状は不明。ふたりは逮捕状も見せないまま我が物顔で部屋中を物色し、木村を困惑させる。
次の日曜日。裁判所へと向かった木村は、郊外の古びた学校にたどり着く。体育館に一時的に設けられた「法廷」で判事と対面するが、話は全くかみ合わない。ずさんでいい加減な対応に戸惑い、苛立ちをあらわにするが、まともに審議もされないまま閉廷を言い渡される。身に覚えのない突然の逮捕によって、次第に追い詰められていく木村。
無実を訴えてあがけばあがくほど、蜘蛛の巣のような“システム”に絡みとられ、どんどん身動きができなくなっていく。ここから抜け出す方法はあるのか?救いを求めて奔走するものの、期待はことごとく外れていく。そして木村は、出口のないこの迷路の終焉に、気づき始めるのだった―。

CAST

石原尚大 大田レオン 濱くるも 丹羽満里奈 山下ケイジ 逸見泰典(ジルバ) 亀岡園子 大山真子 ちゅうざん 秋葉よりえ 想真 明季 西田好孝 ナシモトタオ キングチャイルド 磯村健治(友情出演)

staff

監督・脚本 ジョン・ウィリアムズ
音楽 スワベック・コバレフスキ

原作 フランツ・カフカ「審判」

プロデューサー 高木祥衣 古川実咲子 塩崎祥平
撮影 早野嘉伸
照明 大久保礼司
録音 小川武
美術 中村三五
編集 稲川実希
音響効果 堀内みゆき
監督補 高田真幸
助監督 岩崎祐
ヘアメイク 西尾潤子 松本幸子
衣装 斎藤安津菜
制作 竹上俊一

DIRECTOR

監督
ジョン・ウィリアムズ

プロデューサー、映画監督、脚本家。上智大学外国語学部英語学科教授。英国生まれ、1988 年来日。デビュー作『いちばん美しい夏』(2001年) は、ハワイ国際映画祭でグランプリを獲得し、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門NETPAC賞など、各国の国際映画祭で受賞。佐藤浩市、木村多江主演の『スターフィッシュホテル』(2007年)は、ルクセンブルグ国際映画祭でグランプリ。佐渡島を舞台にした3作目 『佐渡テンペスト』 (2013年)は、シカゴ国際映画音楽祭にてグランプリを受賞。本作が長編4作目となる。

この映画の原作は、30歳の誕生日の朝に“目覚める”男の物語です。カフカはおそらく、この年齢を慎重に、あえて選んだのだと思います。ただ目を覚ますわけではなく、ありふれた日常の中で、些細な悟りの瞬間を体験する物語の主人公を選んだのです。

目覚めてしまうと、もう、まわりを見る目はどんどん変わってしまいます。毎日の生活、仕事、従順に守ってきた社会のルール・・・「逮捕された」という最悪の事態を目の前にすると、(実際、男は何の法律違反もしていないのだが)この世界がぜんぶ無意味に思えてくる―。最近よく、こう感じるのです。「私たちは誰しも、何かしらの罪で逮捕されてもおかしくない世の中で生きているんじゃないか」―ということは、どうやって無罪を主張するのか。あなたは、あなたの「無実」を証明することはできますか?

カフカが1915年に執筆したこの物語は、いつ映画化されてもその時代に通じるものがあります。顕著なのはオーソン・ウェルズの作品でしょう。フィルム・ノワールの照明スタイルと表現派を彷彿とさせるセットで、冷戦時代の悪夢を見事に描いています。でも、私は現代の東京を選びました。悪夢が現実の世界に浸食するように、観る人が、日本、そして世界で実際に起きていることを思い浮かべてくれたらいいな、と思っています。

秘密保護法、ブレグジット、トランプ、共謀罪、モリカケ問題。同じようで、違う世界。毎日新しくなる現実で、目を覚ます私たち。この世界を変えることはできるのか、それとも、おかしいと思いながらも受け入れるのか。受け入れるとしたら、それは「逮捕」されている、ということ?疑問を持つ人はどうなる?そもそも、この世界への違和感を覚える自由、考える余裕すら、今の私たちにあるのか?

本作は、知らず知らずのうちに、私たちを支配している奇妙で、怠惰なシステムについての映画です。巨大すぎて、ほとんどの人は気にもせず、ぼんやりと見過ごすだけ。政府や、テレビや新聞や、たいていのメディアは私たちの思考を停止するのに一生懸命。少しずつ、民主主義がそぎ取られていませんか。政府なんかよりもっと陰湿で、人目につかない「何か」にさりげなく、少しずつ。

この映画が、ぼんやり寝ぼけた頭を突き刺すモーニングコールになることを願っています。その、うっとうしい目覚まし時計はこう鳴り響いています。

「お・き・ろ!」

MUSIC

音楽
スワベック・コバレフスキ

ポーランド出身の作曲家・ピアニスト・音楽プロデューサー。現在は、東京をベースに活動。大手映画や放送局(NHK、フジテレビ、テレビ東京、TBSネットワークなど)のプロダクション、そして日本の代表的ポップアイドルグループAKB48などの音楽を手がける。そのジャンルは古典管弦楽曲から、日本の伝統音楽、ピアノ独奏、ジャズ、エレクトロニック、ミニマル・ミュージック、アヴァンギャルドまで幅広い。
5歳でピアノを始め、10歳の頃に共産主義支配下のポーランドから西ドイツに家族とともに移住。それによって、彼の音楽的視野は大きく広がった。アムステルダム音楽大学に入学後は、ピアニストHåkon Austbøから古典ピアノ演奏の厳しい訓練を受ける。その後は同音楽院にて、数々の受賞歴をもつ作曲家Jurre Haanstraのもと、映画音楽のための作曲とオーケストレーションを学んだ。
Edmund Yeo監督の短編映画『金魚』のために手がけた音楽が、2009年のヴェネツィア・ビエンナーレで称賛される。ジョン・ウィリアムズ監督作品への参加は『佐渡テンペスト』(2013)に続いて2作目。『佐渡テンペスト』のために手がけた独創的な音楽は、2013年のブルックリン映画祭にて最優秀音楽賞を受賞。古典から現代の様式を自由に展開させ、エレクトロニックや有機的なテクスチャーを融合するという能力をもつ。

Sebastian Mayer / AEIOU

MUSIC

パペットアーティスト
秋葉 よりえ

フリーランスの俳優を経て劇団燐光群に所属し10作品に出演後、2009年に文化庁の新進芸術家としてパペット研修のため渡米。滞在中パペットアンサンブルグラシオブルオを立ち上げた翌年にNPO法人化。
いいだ人形劇フェスタやパレスチナで、東北被災地での活動をもとにしたオリジナル作品を上演。荒川区の事業でパペットクラスを指導し、市民参加者を含んだメンバーで、タイのHIV村で、いじめを題材にした「からすたろう」を上演。
その後パレスチナに長期滞在し、イスラム文化の人々に向けて人形作品を上演。ロンドンバブルシアターカンパニーとの共同演出作品「広島の孫たち」は広島市民と、「アフター広島」はロンドン市民と、作品を共同創作。
この他にも、広人豪浄瑠璃発祥の地と言われる愛知県岡崎市にて市民参加型のパペット舞台を監修。近年は専門家育成や影絵の分野にも活動を広げる。代表作に「ウーマン、シャーマン」「邪馬台国のチサとオト」など。特定非営利活動法人シアター&パペットアンサンブルグラシオブルオ芸術監督。